10年の片想い
「し、しかし証拠がない!
わたしがお金を盗んだという証拠がない!」
「ありますよ、証拠なんて」
スイッと前に出たカオリは、相変わらずの燕尾服のような服装の胸ポケットから、1枚の紙を取り出し、理事長に突き出した。
あたしたちも見るけど、ものすごい額のお金が印刷されていた。
「なっ……!?」
「総額・約80億ですね。
どうりであなたが家(うち)の人を雇える予算があったものです」
家の人…?
「何で知っているんだ!
それはっ……」
「姫神宮楓(かえで)しか知らない、そう仰りたいのですか」
「な、何で楓を!」
ふっとカオリが笑う。
黒い笑みだった……。
「これはこれは。
僕としたことが、申し遅れました。
僕は姫神宮花桜梨と申します。
三金様の家に仕えます、姫神宮楓の弟です」
三金家―――理事長の家に仕える?
「姫神宮…花桜梨?」
「はい。
現在は九条院財閥の御曹司・透哉様に仕える、執事です」
カオリが、
トウヤに仕える、
執事!?