10年の片想い






「し、しかし証拠がない!
わたしがお金を盗んだという証拠がない!」

「ありますよ、証拠なんて」




スイッと前に出たカオリは、相変わらずの燕尾服のような服装の胸ポケットから、1枚の紙を取り出し、理事長に突き出した。

あたしたちも見るけど、ものすごい額のお金が印刷されていた。




「なっ……!?」

「総額・約80億ですね。
どうりであなたが家(うち)の人を雇える予算があったものです」



家の人…?




「何で知っているんだ!
それはっ……」

「姫神宮楓(かえで)しか知らない、そう仰りたいのですか」

「な、何で楓を!」




ふっとカオリが笑う。

黒い笑みだった……。




「これはこれは。
僕としたことが、申し遅れました。
僕は姫神宮花桜梨と申します。

三金様の家に仕えます、姫神宮楓の弟です」




三金家―――理事長の家に仕える?




「姫神宮…花桜梨?」

「はい。
現在は九条院財閥の御曹司・透哉様に仕える、執事です」






カオリが、

トウヤに仕える、






執事!?









< 111 / 131 >

この作品をシェア

pagetop