10年の片想い
唇が離れると、トウヤはあたしを見て笑った。
「ごめん、嘘ついて」
「嘘……?」
「この傷は、事故でついたものじゃない。
“幸せの家事件”で起きたものだ」
「……ッ!?」
“幸せの家事件”。
あたしと美愛が幼い頃いた施設で起きた、事件のことだ。
“幸せの家”とは、施設の名前。
「と、トウヤ……?」
「オトナになったのか、凛」
「トウヤが…あの男の子?」
「そうだ。
嘘をついて、悪かったな」
あたしはトウヤに抱きついた。
覚えてる。
このぬくもりも、あのキスの感触も。
大好きな、“あの子”だ。
「あたし、トウヤが好き……!」
「俺も、凜が好きだ」
ずっとずっと探してきた、
あたしの王子様――――。