10年の片想い







「変わりざるを得なかったんだよ」



あたしの心を読んだのか、先ほどからずっと黙り込んでいたトウヤが口を開いた。




「“あの事件”のあと、俺らが全員離れただろ。
その時、“あの事件”の犯人―――施設長が、俺らの前に現れたんだよ」




“幸せの家事件”。

児童養護施設・幸せの家で起きた、傷害事件だ

施設にいる20人ほどの子どもを1人ずつ部屋に連れて行き、暴行を加えるという事件だった。

その中で最も酷い怪我を負ったのが、当時あたしや美愛と仲の良かった5人だったのだ。

幸せの家で起きた事件は大きく報道され、犯人も明らかになった。

犯人は幸せの家で子どもたちから慕われていた、施設長だった。

施設長はお金を使って施設の職員をたぶらかし、ストレス発散のため子どもたちに怪我を負わせたのだ。






「何で…?
施設長は逮捕されたはずでしょ?」

「一旦抜け出してきたらしい。
施設長は、俺らに言ったんだ。

“姫を本気で守り抜けなかったな”って」

「どういうこと?
皆は、あたしと美愛を守ってくれたよ」

「確かに凛と美愛は怪我を負わずに済んだ。
だけど、俺らは怪我を負っただろ」




トウヤは額に、カオリは左目に、ソラは右足、ウミは左足、キラは両腕に。

姫を守れたとしても、自分たちを守ることは出来なかった。





「俺らは決めたんだよ。
変わって、今度こそ凛と美愛を守るって」






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