10年の片想い
幸せの家事件 全貌
☆☆☆☆
幸せの家。
市内にある、児童養護施設の名前だ。
施設の規模は小さく、子どもは20人ほどしかいない。
とある日の夜遅く。
住み込みで働く職員の1人が、子どもの泣き声を聞いた。
急いで敷地外に出てみると、カゴにいれられた、生後間もない赤ちゃんが泣いていた。
赤ちゃんの体の上には四つ折りのメモ用紙が置かれていて、職員が開いた。
そこにはお世辞でも綺麗とは言えない字で、【凛】と書かれていた。
それから数年。
凜はその後同じくして様々な理由で施設へやってきた子どもたちのリーダー的存在となっていた。
虐待の末捨てられた、美愛。
凛と同じく施設前に捨てられていたロイ。
家庭の経済的事情で捨てられたチャラ。
親が逮捕された後自殺したため来たキョウとダイ。
子どもが多すぎるため必要となくなったお兄さん。
様々な境遇を抱える7人が仲良くなるのに、時間はかからなかった。
凜は女の子なので、やはり美愛と親しかったが、美愛以上にロイと仲が良かった。
ちなみにロイもチャラもキョウもダイもお兄さんも、凜が決めたあだ名だ。
美愛は捨てられる際に名前を呼ばれていたので、そのまま美愛と呼ばれた。
チャラはチャラチャラしているから。
キョウとダイは兄弟だから。
お兄さんは、お兄さんっぽいから。
ロイは、当時凜がはまっていたアニメの主人公の恋人の名前だ。
そんな簡単な理由で名付けられたにも関わらず、5人は凛や美愛と一緒に遊んだ。