10年の片想い






凜もロイも、両親を知らずに育った。

物心ついた時から、この場所にいたから。

親、なんて存在は知らなかった。

だからこそ、お互い親のいない寂しさを、癒していたのかもしれない。





『……ヴッ!』

『ロイッ!?』




ロイは腕を施設長に捕まれた。

凜は駆け寄ろうとしたが、施設長に操られている職員が凜の行き先を阻んでいた。




『嫌あああああっ!!』




ロイは額を切られた。

散々鉄パイプで殴られても、血の出なかったロイの頑丈な身体から、血が流れる。

凜は喉がちぎれんばかりに叫んだ。





『ふっ……馬鹿な奴だ』




額を押さえながら痛みにもがき苦しむロイ。

凜はそれを見て、ダッと走り出した。

そして、落ちていた鉄パイプを、思い切り施設長の頭にぶつけた。

施設長はまさか凜が襲ってくるとは思わなかったようで、頭から血を流して苦しんでいた。

その間に凜は自分より背も体重も低かったロイを抱きかかえ、部屋から出てきた。




『えんちょーは今いないから!
早く、誰かに知らせて!!』




凛の泣き叫ぶ声に、全員が痛みに耐えながら起き上がり、窓に貼られたガムテープをはがし始めた。

途中施設長にお金で買収された職員が止めたが、唯一怪我を負わずに済んだ凛と美愛で、職員を、ガムテープを剥がす子どもから離した。







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