10年の片想い
ガムテープは無事外れ、子どもたちは急いで外に助けを求めに行った。
近所の人たちは幸せの家で暮らす子どもたちを見守るような存在だったので、血まみれの子どもたちが来た時は、すぐに警察へ連絡してくれた。
凜は連れてかれる施設長や職員を見て、施設長を殴った自分も連れて行かれるのではないだろうかとヒヤヒヤしたが、
凛のしたことは正当防衛だと認められ、凜が罪に問われることはなかった。
後に優しい施設長が来て、再び凜たちは施設で過ごし始めた。
しかし、幸せは続かなかった。
自分たちの代わりに怪我を負った5人が、それぞれ引き取られることになったのだ。
施設での事件は大きく取り上げられ、特に凛と美愛を守った5人は大きく報道された。
その事件を見ていた
九条院財閥の社長はロイ、
執事の名家である姫神宮家はお兄さん、
当主が警視総監の虹見家にはキョウとダイ、
相馬組の相馬家にはチャラが引き取られることとなった。
凜はロイから手紙をもらい、オトナになることを決意した頃。
凛と美愛を不憫に思った久留米家と田島家が、2人を引き取りたいと申してきた。
2人が仲の良いことを聞いた両家は、お互いの家を隣同士にし、凜と美愛が今まで通り仲良くすることを願ってくれた。
でも、凜は10年間、忘れることはなかった。
いつも優しいお兄さんも。
喧嘩ばかりでも本当は仲の良いキョウとダイも。
チャラチャラしているけど、明るいチャラも。
自分を犠牲にしてまで守ってくれた、ロイを。
凜はその後アニメに興味はなくなり、いつしかロイというあだ名も忘れてしまっていたけど。
自分を守ってくれた“あの子”の存在は、忘れなかった。
そして凜は、
10年後、
再び仲良しメンバーと再会したのだ。
その中には、
10年間凜が一途に思い続けた、
“あの子”もいたのだ――――……。