10年の片想い
『あ、そういえばチャラは?』
『チャラなら、他の子と一緒にいるよ』
『もしかしてまた、クドいているの?』
『凜ちゃんこそ、難しいの知っているね』
『この間見たアニメで、リンちゃんが言っていたの。
本当にロイはかっこいいんだよー?』
『凜ちゃんは本当にそのアニメが好きだね』
『大好き!
だってロイかっこいいもん!
あたしも10年もの間、同じ人を思い続けていたいなぁ!』
ちらり、とロイを見るけど、ロイは『ふーん』と言うだけ。
あたしは少し寂しくなった。
ロイは、アニメのロイに負けないぐらい良い人だよ。
そう言えたら、良いのに。
ギュッ
『えっ、ろ、ロイ?』
『凜ちゃん手冷たい。
僕が温めてあげるからね』
『…ありがとう、ロイ』
『僕、ロイみたいになれてる?』
『えっ!?』
『僕、凜ちゃんのこと好き―――…』
『おーい!ホットケーキ焼けたってよー!』
『『ホットケーキ!?』』
『おいキョウ、同じこと言わないでよ!』
『ダイこそ!』
『ほらほら、喧嘩しないでください。
チャラも待っていますから、行きましょう?
美愛ちゃん、行きますよ』
『待ってよぉーお兄ちゃん!』
…………。
『ロイ、今なんて言った?
チャラの声にかき消されて、何も聞こえなかったよ』
『…良い。
ホットケーキ、食べに行こう?』
『うんっ!』
ロイが好きって、言えるよね。
好きって言葉は、大事にしないといけないけど。
ロイになら、言っても良いよね。
あたしはロイの背中に、そう誓ったんだ。
アニメのように、離れ離れになっても、ロイに対する思いは変わらないはずだから。
【END】