10年の片想い
「凜ちゃんは、好きな子いるの?」
「好きな子?」
「そう」
好きな子―――。
「いるはいるよ」
「どんな子?
同じクラスなのかな?」
「ううん。
小さい頃別れたきり、会ったことないの」
「おー、何だか切ないね」
「名前さえも知らないの。
ただ、覚えているのは、傷があったことだけ」
「傷……?」
小さいながらも、とても顔立ちの整っている男の子だった。
凄く優しくて、ふんわりといつも微笑んでいて。
ただ、彼には傷があった。
「額にあったの。
整った顔立ちには似合わない、細長い切り傷が」
だから“あの子”はいつも前髪で隠していた。
傷を他の子にからかわれるのが嫌だったみたいで。
「その額に傷を持つその子が、凜ちゃんの好きな子?」
「そうだよ。
そう言うキラは好きな子いないの?」
「ボク?」
キラは考えたのち、ふっと微笑んだ。