10年の片想い
「…………」
そして中央の席に座り、先ほどからずっと黙り込んでいるのは。
乱馬総長・九条院透哉だ。
必要最低限は話さず、時々この部屋で行われる乱馬の会議でも、滅多に口を開かない。
ただ話は誰よりも真面目に聞いている。
ちなみに会議と言っても、会社の会議のように堅苦しいものではなく、ただのお喋り会みたいなものだ。
女子会みたいなものと取ってくれても良いだろう。
「キラ、あなたは後先考えずに行動することが多いんですから。
ちゃんと後先を考えて行動するよう、前から言っているでしょう」
「……ごめんなさい」
「先ほどあなたは僕が何も言わなかったからだと言いましたけど。
僕が何か言ったとしても、あなたは聞く耳持たないでしょう」
カオリが言っているのは、この間のテストの時だ。
最下位の成績を取ったキラが、いつものようにカオリの元へ勉強を聞きに行った。
しかし、カオリがお茶を淹れに行っている最中に、キラは勉強せず、近くにいたソラやウミとトランプで遊び始めたのだ。
その時カオリは、キラに
「そんなことしているのでしたら、再びテストで赤点取りますよ」
と叱ったのだ。
しかしキラは聞く耳を持たず、トランプに没頭。
結果、キラはカオリの言う通り、テストは不合格となった。
「た、確かにあの時は聞かなかったけど。
普段は聞くぜ?ボク」
「いつ僕の言うことを聞きましたか」
「…………」
キラは言葉に詰まる。
当たり前だ、カオリの言うことなど聞いたことがないのだから。