10年の片想い
美愛との通話を切り、あたしは眠りに落ちた。
そして、幼き頃の夢を見た。
あたし、美愛、“あの子”はいつも一緒に遊んでいた。
それと、“あの子”の男友達も。
誰よりも大人びていて、色々なことを教えてくれたお兄さん。
喧嘩ばかりしていた、双子の兄弟・キョウとダイ。
いつも同じ施設にいた女の子たちにちょっかいを出していた・チャラ。
“あの子”を含め、本当の名前は知らない。
初めて会った時に、全員自己紹介はしたけど。
名前を覚えることが出来なくて、あだ名で呼んでいた。
あたしと美愛は、全員から名前で呼ばれていたけど。
あたしたちは、お兄さん・キョウ・ダイ・チャラと呼んでいた。
だけど。
どうしても、“あの子”のあだ名は思いだせない。
顔はいつでも、思いだせるのに。
“あの子”と会った時、あたしは緊張した。
お兄さん・キョウ・ダイ・チャラと出会った時は、緊張なんてしなかったのに。
1番後に施設に入ってきた“あの子”にだけは、何故か緊張したんだ。
それはきっと…幼いながらも、あたしは“あの子”に一目惚れをしたから。
勿論その頃は小学校にも行っていなかった年齢だったから、恋というものがどんなのかわからなかったはずだ。
だけど、あたしは間違いなく、“あの子”に恋をしたんだ。
あたし・美愛・“あの子”・お兄さん・キョウ・ダイ・チャラは、いつも一緒に遊んでいた。
きっと、オトナになっても続くんだろうと思っていた。
ずっとずっと、仲良しのままでいると思っていたんだ。