10年の片想い
だけど、“あの事件”が起きた。
それぞれ、怪我を負った。
傷を持たなかったのは、あたしと美愛だけ。
あたしと美愛が怪我しなかったのは、“あの子”たちが守ってくれたから。
“あの子”たちは、女子であったあたしたちに、優しくしてくれた。
『女の子は、怪我しちゃ駄目なんだよ』
“あの子”が“あの事件”の時言っていた言葉。
『だから、僕らで守ってあげるね』
5人は盾になり、あたしと美愛を守ってくれた。
お蔭であたしたちは怪我しなかったけど。
5人は、それぞれ怪我を負った。
それから間もなくし、5人は養子になった。
幼いあたしたちは養子、なんて言葉は知らなかったから、遠くに行くんだという表現を使った。
5人が施設から姿を消した数週間後、2組の夫婦が『“あの事件”のあった施設の子を引き取りたい』と申し出てくれた。
その時引き取られた―――養子になった子ども2人が、あたしと美愛だ。
夫婦はそれぞれ、施設の職員からあたしたちが仲の良いことを聞いてくれたから、離れることなくこうして隣同士の家に住み、前と同じよう仲良くしている。
美愛と遊ぶのは楽しいけれど。
やっぱり、あの5人とも遊びたい。
事件の日まで、施設の庭で走り回っていたように。
お兄さんに知識を教えてもらい、
キョウとダイの喧嘩を止めたり、
美愛と笑いあったり、
“あの子”の傍にいたかった。