10年の片想い
☆☆☆
土曜日。
あたしと美愛は、約束通り海に来ていた。
あれから校内を回り、乱馬のメンバーを探したけど、一向に見つからない。
その前に、生徒名簿に乱馬の名前が載っていなかった。
生徒名簿に載っていない―――乱馬は三金高校の生徒ではないと言える証拠になってしまう。
「幻の生徒みたいじゃん、それじゃ」
「そうなんだよねぇー……」
浜辺にある階段に腰かけ、美愛と海を眺める。
8月などの海水浴の季節ではないので、人はいない。
ただ、波の音が聞こえるだけの、静かな空間だった。
「…あたし、乱馬に会いたい……」
「トウヤが、額に傷を持っているから?」
「ううん、違う。
乱馬と一緒にいたいの……」
「凛。
それじゃまた、あの5人の傷を見ることになるよ。
お兄さん・キョウ・ダイ・チャラと同じ場所に傷を持つ彼らに」
「…そうなんだけどね……」
“あの事件”で、5人は怪我を負った。
お兄さんは、カオリと同じ左目に。
キョウとダイは、ウミとソラと同じ足に。
チャラは、キラと同じ両腕に。
“あの子”は、トウヤと同じ額に。
こんな偶然…あり得るのだろうか?