10年の片想い







「凛…私の意見だけどね」

「ん?」




あたしは海から、美愛へ視線を動かした。




「乱馬と関わるのは良いと思う。
私も、凜と一緒で、乱馬に会いたいから。
だけど、トウヤとあの男の子を重ねて見ちゃ駄目だよ。
トウヤはあの額の傷を、事故で負ったんでしょう?」

「重ねて見るつもりなんて、ないよ…」




最後の方は、掠れてしまった。

だって、重ねて見ない自信がない。




「もし重ねて見るのなら、トウヤや乱馬に関わらない方が良いよ。
トウヤが傷ついちゃうから……」




トウヤが傷つくのを、乱馬のメンバーが黙って見ているはずがない。

特に、カオリが。




「難しいと思うけど、トウヤとあの男の子を別の人間と考えてあげて。
そうしたら、トウヤとも接せられると思うから」

「ありがとう…美愛」

「失礼します」




突然声をかけられ、美愛と一緒に急いで振り向いた。

すると、見覚えのない男性が立っていた。




黒髪をオールバックにし、カオリと似たような眼鏡をかけている、真面目そうな男性。

エリートって感じがプンプンする。







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