10年の片想い







「あたしっ、乱馬に会いたいって思っていたんだ」



素直に泣いた理由を告白する。

全員驚いていた。

キラやウミ・ソラだけでなく、普段表情を変えないトウヤもカオリも、目を見開いていた。




「そうしたら皆、ヒーローのように迎えに来てくれて。
本当にもうっ…嬉しいよぉ……」

「私も、凛と同じ意見だよ……っ」




たった1日だけ、一緒に関わった人たちなのに。

こんなにも、会いたいと思う。

それはきっと、過去一緒に遊んでいた仲間と、似ているから。





「凜ちゃん、美愛ちゃんっ……」




ギュッと、キラがあたしたちを抱きしめた。




「……泣くなよ」



少しだけぶっきらぼうだけど、優しくトウヤが口を開いた。




「凛と美愛は、俺ら乱馬の守るべき姫だろ。
2人が会いたいって思っているときに来るのは、当たり前だろうが」




ふっとトウヤが笑う。

あたしは、不覚にもドキッとしてしまった。

トウヤが“あの子”に似ているから、ドキッとしたんじゃない。

だってあの額の傷は、トウヤの長い前髪によって隠れているのだから。




あたしは今、九条院透哉にドキッとしたんだ……。









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