10年の片想い
「トウヤ……」
あたしはキラの腕を離れ、トウヤの横に並んだ。
するとトウヤは、小さい子をあやすかのように、あたしの頭を優しくなでた。
「泣き虫だな、凜は」
「……ッ」
両手で涙を拭っていると、トウヤは額にキスをしてきた。
驚いたけど、嫌だとは思わなかった。
「俺は、凜が思うような、“あの子”じゃないけど良いのか?」
額から唇を離したトウヤが、何故か寂しそうな顔をして言って来た。
「トウヤ。
今、“あの子”は関係ないよ」
今、“あの子”は関係ない。
今あたしの目の前にいるのは、間違いなくトウヤなのだから。
「……凛」
そのよく通る、低い声が、あたしは好き。
何だか凄く、ほっとするんだ。