10年の片想い
「凜ちゃんと美愛ちゃん…暴走族だったのか?」
あたしと美愛は、頷いた。
オトナになりたかった。
中学の頃は、“あの子”に会いたくて仕方なかったから。
オトナになるため、あたしは美愛と赤青神を作りだした。
喧嘩はしない、メンバーも少ない、小さな族。
皆を束ねることが出来るのなら、オトナになれると思ったから。
“あの子”に会えると思っていたから。
でも結局“あの子”には会えなくて。
赤青神は一度別の本物の暴走族に潰されて。
それ以来赤青神はなくし、生徒会長になった。
全校生徒を束ねることが出来たのなら、“あの子”に会えると思っていたから。
「理事長は、暴走族は全て悪いものだと考えている人で。
生徒会長と副会長になったあたしと美愛を、理事長は調べ上げて、かつてあたしたちが赤青神の総長と副総長だとわかったの。
それ以来あたしたちは、理事長に敵視されているんだ……」
車が赤信号に当たったのか、停まる。
「あたしと美愛が本当に喧嘩をしたのは、1度だけ。
それ以来、あたしは喧嘩していないよ」
赤青神を守るために、近所の人たちを守るために、喧嘩した。
それが理事長は認めなくて。
どんな理由であれ、喧嘩は喧嘩だと認めることはなかった。