10年の片想い
「あたしって以前話したと思うけど、久留米家の養子なの。
お父さんもお母さんも、あたしに凄く優しくしてくれるの。
赤青神を作った時だって、人のためになれるのなら良いって認めてくれた。
1度きりの喧嘩も、理由を聞いたら納得してくれた。
だからあたし、退学なんてしてお父さんとお母さんに迷惑かけたくないの。
退学しないためには、理事長の言う通り、乱馬のお金の使い道を調べないといけないの。
乱馬のこと…利用していたんだね、あたしたちは……」
トウヤが、“あの子”に似ているからじゃない。
カオリが、お兄さんに似ているからじゃない。
ウミとソラが、キョウとダイに似ているからじゃない。
キラが、チャラに似ているからじゃない。
乱馬が、
施設で一緒に過ごした仲間に似ているから仲良くしたんじゃない。
あたしたちは、乱馬を利用していたんだ。
退学しないために。
自分たちを引き取ってくれたお父さんとお母さんに迷惑かけないように。
生徒からの不信感を拭うために。
「降ろしてもらえますか」
あたしは運転手さんに声をかけた。
運転手さんは、あのカオリ似の男性だ。
車が停まり、あたしは美愛と一緒に降りた。
「今までごめんなさい。
最初は、利用するつもりなんてなかったんです。
純粋に、乱馬のことを知りたかったんです。
先ほどの涙も、嘘じゃないです。
ごめんなさい。
ありがとう…ございました」
あたしは美愛の手を引き、走り出した。