10年の片想い
「凛、良いの……?
嘘なんでしょ、利用しているなんて」
車の入れない、細い路地裏。
後ろから、美愛が言う。
あたしは振り向かず、笑った。
「嘘に決まっているじゃない。
利用しているんだって思ったのはついさっき。
本当はこれからも、乱馬と一緒にいたいよっ……」
笑うのを止め、あたしは泣きだす。
さっき、トウヤにキスされた額が痛い。
「でも、あたしと一緒にいたら、皆傷ついちゃう。
いずれ“あの子”のように、傷を負っちゃう……」
美愛だって、そう。
美愛は1度、赤青神の喧嘩の際、相手のパンチを避けきれなかったあたしを庇って、1週間意識不明になったことがある。
幸い意識は戻り、怪我も完治したけど。
あたしは美愛が意識不明の時、何度も自分を恨んだ。
美愛のご両親は「凜ちゃんが恨まないで」って言ってくれたけど、あたしは恨んだ。
美愛が“あの子”のように消えてしまうと思ったんだ。
1度は美愛を突き放そうとした。
いくら赤青神をやめたからと言い、美愛を傷つけないという確信はなかったから。
だけど、美愛は何度もあたしにくっついていきて、一緒にいたいと泣いていた。
だから、あたしは美愛を守ると決意したんだ。
“あの子”のように、傷つけたくないと。