10年の片想い
タカラモノ
☆NOside☆
凛と美愛が泣いていることを知らない乱馬メンバーは、いつものお屋敷の最上階の例の部屋にいた。
そもそも、乱馬は2人をここに連れてくる予定だったのだ。
勿論、自分たちのことを全て話すまで、この部屋に通すつもりはないが。
この間凜たちをいれた客間になら、通せると思っていたのに。
部屋には、異様な雰囲気が漂っていた。
トウヤはいつもの椅子に座り、分厚い本を捲っている。
だが、目線は上の空で、ただ単にページを意味もなくペラペラ捲っているだけ。
一応言っておくが、分厚い本は決してパラパラ漫画の本ではない。
普通の、字が沢山詰まっている、活字の本だ。
カオリは部屋の片隅で、心を無にしてお茶を淹れていた。
乱馬はカオリ以外全員猫舌のため、熱いお茶はカオリが冷ます役目を持っている。
その方法とは、お茶をひたすらかき混ぜること。
空気と混ぜることで、熱を冷ましているのだ。
カオリはただひたすら、カップに注がれたお茶をかき混ぜていた。
まるで、卵を泡立てているみたいだ。
ソラとウミはいつもの椅子に座り、ボーッと同じ方向の天井を見つめていた。
が、見つめている先は豪華なシャンデリアなので、段々と2人の目はチカチカしてきた。
だけど、2人はシャンデリアを見つめるのをやめない。
今は眩しいという感情よりも、重要なことが起こっているからだ。