俺とお子ちゃま彼女
「当日、出番は最後のほうなのに早く着いちゃって他校の演奏を聴くことになった。そこで…唯斗を見たの。」


俺はあの時…自由曲のソロを担当したんだ…!


突然恥ずかしくなった。


「まさか…」


「うん。唯斗のソロ聴いたよ!今でも…覚えてる。」


あの時吹いたのは力強く吹くところで…曲の山場だった。


俺が失敗したら曲は成り立たない。


そんなプレッシャーに耐えながらも、心をこめて…審査員の人たちに伝わるように吹いた。


「唯斗の演奏を聴いて…不思議と安心したの。普通、上手い演奏聴いたら押し潰されるのに…不思議だよね。」


俺の音は…知らないところにも届いてた…。


そう思うとうれしくてたまらなかった。


「…で?小谷さんのソロは成功した?」


過去のことだからどうしようもないけど、俺は成功を願った。


「うん!成功…したよ!唯斗の演奏聴かなかったら…絶対成功してなかった。全部唯斗のおかげなんだ…。」


「小谷さん…それはちがう。」


「え…?」


俺のおかげなんかじゃないよ?


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