俺とお子ちゃま彼女
「唯斗くん?どうしたの?」


隣からふと声が聞こえ、ハッとする。


声の主は末永さん。


「なんでもないですよ…!ただ…考え事してて…。」


考えれば考えるほど不安になる。


「現場の雰囲気に押された…?」


図星をつかれてドキッとした。


思わず黙り込む。


「さっき撮影してた人はね、1年前にあたしがスカウトしたの。」


さっき撮影してた人…その人は俺がB&Gを見た時に圧倒されたあの人だった。


1年であんなに…。


「一臣[カズオミ]って言うんだけどね…」


末永さんの話はこうだった。


1年前、一臣さんはいわゆるヤンキーでろくに学校も行かずに毎日道端でたむろしていた。


そこに末永さんが通りかかって、ピンときたんだって。


この人は売れる…と。


最初は断られたけど、あきらめられなくて何回も説得した結果、一臣さんが折れたらしい。


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