年下くん。
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“いらっしゃいませー”
店内に響き渡る、複数の声。
「お、もりんちゅ、おはよー」
「店長、その呼び方やめてください」
バイトをはじめて1ヶ月。
だんだんお店の雰囲気にも慣れてきた。
キッチンの裏口に向かう間、あたしは探す。
あ……、
いた。
黒髪の背の高い人。
間違いない。
気配に気づいた彼が振り向く。
セットされた黒髪が揺れて、
二重の目があたしを捉える。
「おはよ」
こっちを向いて、にやっと笑う。
「…おはよう」
なぜか、探してしまう、
こいつのことを。