不器用彼女
さりげない気遣い
架歩を送ったあと、俺は部屋にある大量の甘いものの山を見ていた。
あまり甘いものが好きではない。
それを知っているのは、男友達だけ。
だから、バレンタインというイベントはあまり好きではない。
架歩から貰ったものから食べるか、
押し込まれていた分から食べるか悩んだ末、
好きな人からのものを後から食べようという結論に至った。
「…やっぱり、甘い…」
3個目でもうギブだった。
でも、架歩から貰ったものは今日中に食べたい。
夜はもう食べたくない…
そう思い、手を伸ばした。
可愛く包装されたリボンを丁寧に取り、箱を開けるとメッセージカードが入っていた。
"日頃の感謝と愛を込めて…"
綺麗な字でそう書かれていた。
短いメッセージなのに、嬉しくてにやけてしまう俺はおかしいだろうか…。
メッセージカードを持ち上げると、
店で売っているような生チョコが4つ入っていた。
ひと切れ取り出し、口へと放り込む。
甘くもなく、苦くもなく…
とても好みの味だった。
ふとカードの裏を見ると、
"甘いものは苦手だと聞いたので"
と小さな文字で書かれていた。
((カカオ75%))