僕が彼女にチョコを貰えなかった理由
私がそう聞くと、龍人は少し驚いた顔をして、それからスゴく悲しそうに笑って、



「大丈夫だよ」


と言った。




龍人が優しくそう言うので私は意を決して渡された包みを龍人へと差し出した。



「へ?」


驚く龍人がおかしくて笑ってしまう。


「俺の?」


「そうだよ、他に誰に渡すの?」



クスクス笑いながら言うと、龍人は私から包みを受け取り黙って眺めている。



龍人が何も言わないから何だか不安になって来た。



「龍人?」



私が呼ぶと、龍人は驚いた顔のままゆっくりとこっちを見て、


「コレ、俺の?」


また言った。



「だから、そうだってば!」


そう言った途端、引っ張られて、息苦しくなる。



一瞬何が起きたか分からなかったけど、私は龍人に抱きしめられていた。



「ちょっと・・・りゅうと?」



「良かった。」


「へ?」



「これが俺ので良かった。」




耳元で声がする。



ちょっと息苦しかったけど、龍人の声でさっきまでの不安はどっか言ってしまった。



「誰のだと思ったの?」



私が抱きしめ返しながら聞くと、龍人は更にギュッとしながら、



「わかんない・・・・わかんないけど、俺じゃないと思ってた。」



彼氏が居るのに他の男に手作りのお菓子なんて贈る訳無いじゃん!そう言ってやろうかと思ったけど、私も悪かったし



「龍人しかいませんよ。」



それだけ言っておいた。



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