僕が彼女にチョコを貰えなかった理由
私が差し出したブラウニーを龍人が口に入れる。


その行動が妙に色っぽくて心臓に悪い。


そんな私のことなんておかまいなしに、龍人はゆっくりとそれを咀嚼する。



そして、飲み込んだ後、私を見てにっこり笑って



「美味しいよ。」



って言った。


その言葉を嬉しいはずなのに、今の私はそれどころじゃない。



いつもとは違う龍人に、慣れない事をやらさせてパニックになってる。



耐えきれなくなって下を向くと、あごをもたれて、また前を向かされる。



「恥ずかしい??」



真っ直ぐに見つめられてそう聞かれて、もっと恥ずかしくなって目をそらす。



すると今度は、抱きしめられた。


「今まで食べたお菓子の中で一番美味しいよ。」



「そんなわけないじゃん。」



褒めてくれるのは嬉しいけど、いくら何でもそれはない。



「ホントだよ?母さんがみんなの為に作ったお菓子より、春香が俺の為に作ってくれたケーキの方が美味しいに決まってる。」


耳元で、そう言われると反論できなくなってしまった。


「恥ずかしかった?」


「うん。」




クスクスと笑いながら聞かれて、そう答えた。



「じゃあ、来年からはちゃんとバレンタインに頂戴ね。


 じゃないと、もっと恥ずかしい思いをすることになるから」




「えっ??!!」






おわり

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