僕が彼女にチョコを貰えなかった理由
2月13日 (金曜日)


ピーピー


その音で、オーブンの蓋をあけると、中から甘い匂いが漂って来た。


「ちょーいい匂い!めっちゃ美味しそうじゃん!!」



友達の千佳が横から覗き込みながら言った。



焼き上がったブラウニーを取り出してテーブルの上に置く。


「ホントだ。綺麗に出来上がってるね!」


テーブルでトリュフを丸めていた美咲が言った。


「うん。そうだね。」



確かに、我ながらなかなか良く出来たと思う。


でも、あくまでも『我ながら』だ。



小さくため息をつくと、彩花と目が合った。


心配そうな、呆れているような何とも言えない表情でこっちを見て来る。



私は、彩花に曖昧な笑みを返して、作業に戻った。






しばらくして、テーブルには綺麗にラッピングされた箱が4つ。


ピンクの紙に包まれて、白いリボンはラブラブの彼氏にあげる千佳の。


黄色い袋に入って赤いリボン結んであるのは、いい感じのバイト先の子にあげる美咲の。


赤い紙に包まれて、金色のリボンは、幼なじみにあげる彩花の。



そして、ワインレッドの包み紙で、紺のリボンがしてあるのが私のだ。



「春香のラッピング、なんか渋くない?

 私の、ピンクの紙あげようか?」


千佳が言った。


確かに、4つ並べてみると、私のだけなんだか地味に見える。


「春香のは、これでいいのよ!だって、あげるのは龍人君なんだから!!」


「そっか、龍人くんだからいいのか!!」


勝手に盛り上がる2人。



私は何も言っていないのに、何だが2人で納得してしまったみたい。




「あぁ、もうこんな時間だ!バイト行かなきゃ!」


「わたしも、待ち合わせに遅れちゃう!!」


「もう、行くね!ありがとう!!」


「また、月曜に学校でね!!」


そう言って、千佳と美咲は帰って行った。

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