僕が彼女にチョコを貰えなかった理由
賑やかな2人が帰って、残ったのは彩花と私。



私と彩花と千佳と美咲は、大学の同じ学部の友達だ。


ここは彩花の実家。


今年は、バレンタインが土曜日。

金曜は午後の授業が無いから、みんなでチョコを作ろうということになり、大学から近くて、両親とも仕事で遅い彩花の実家のキッチンを借りたのだ。


千佳はこれから彼氏とデート。


美咲はバイト。


二人とも、その時にお相手に作ったチョコを渡すんだって。



私は、これから彩花の家にお泊まり。



明日は一応、彼氏である龍人とデートの予定。




そして、その時、さっき作ったブラウニーを・・・あげない予定。



「春香、今年もそれ、あげないつもり?」


「うっ・・・」


ストレートに聞いて来る彩花に答えに詰まっていると、彩花はため息をついた。



「あのねぇ、いい加減あげたら?今年で、3回目でしょ?

 桂木くんが、かわいそうよ!」


「べ、べつに、バレンタインだからって、彼氏にチョコあげないといけないわけじゃないじゃん!
 
プレゼントは毎年あげてるわけだしさぁ・・・・」



言い訳がましく言うと、彩花は、眉間に皺を寄せた。



「それでも、彼女がいるとチョコは貰えるもんだと思うでしょ?!

 実際、桂木君、去年友達にどんなチョコ貰ったか聞かれて、困ってたみたいよ・・・」


「うそ!!」


初めて聞く話に驚く私。



「桂木君だって、本当は欲しいんじゃないの?あんたのチョコ。」


「そんなこと言われた事無いもん。」


「言うようなキャラじゃないでしょ。」



言い訳を続ける私に、彩花がつっこんだ。


まぁ、確かに、『チョコが欲しい』なんて自分から言うキャラじゃないけど・・・



ワインレッドの包み紙をみながら、無口な彼の顔を思い浮かべた。

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