僕が彼女にチョコを貰えなかった理由
驚いて何も言えずに居ると、総一郎が続けた。


「せっかく、会いに来てくれたのに、夜遅くまであんなことに一人でいたのが危なっかしく思えて・・・・。

 昨日は寒かったし・・・」


「心配してくれたの?」



私がそう尋ねると、総一郎はハァーと大きくため息をついた。


「ひな、俺の事なんだと思ってる?」


「え?いや・・・彼氏だと思ってる。」



総一郎の質問の正解が分からずに、小さい声で答えると、総一郎は眉間に皺を寄せた。


どうやら、不正解だったらしい。



「俺だって、心配くらいする。

 ましてや、ひなは俺の彼女だろ?」



いつもなら、絶対に言わない台詞のオンパレードに私の心臓がついて行かない。


これ以上言われたら、ショック死するんじゃないかと思うほどドキドキしている。



「いくら、俺に渡せなかったからって、礼一郎にやることないんじゃないか?」



「へ?」



突然言われた事が理解できず、変な声が出てしまった。


「だから、チョコレート。

 何で、礼一郎にやったんだ?!」


明らかに不機嫌な声で聞かれても、わたしはどう答えていいのかわからない。


「何でって、礼ちゃん先輩にはいつもお世話になってるから、恭子さんと一緒に食べてもらおうと思って・・・」


とりあえず弁解してみると、礼一郎の動きはピタッと止まった。



「礼一郎と村上の分?」


村上というのは恭子さんの名字だ。


「そうだよ。」


「俺の分を礼一郎にやったんじゃないのか?」


「お世話になってる礼ちゃん先輩にそんなことしないよ。

 ちゃんと、礼ちゃん先輩と恭子さんに渡す用に買ったやつだよ。」










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