僕が彼女にチョコを貰えなかった理由
そして、その状況は、同僚でもあり友人でもある由佳の一言で決着がついた。


「いい加減、素直になれば?」


そう、私はとっくに波留を好きになっていたのだ。


恋愛経験の乏しい私が、波留のようなイケメンに迫られて落ちないはずは無い。


こうして私は、自分に不釣り合いなほどイケメンの彼女となった。


そして、料理は出来ないが、外食は嫌いという波留は、付き合い始めた途端、頻繁にうちに夕食を食べに来るようになった。



目の前で出来立てのオムライスを頬張る波留を見て思う。


そりゃ、こんなイケメンなら、チョコも貰えるだろう。



「なに?」


ジッと見つめていたのを不審に思ったのか、そう聞いて来る波留。


「別に・・・」


そう言って、波留から視線をそらしたが、運の悪いとこにその先には、チョコが一杯入ったダンボール。


「重そうだね。」


咄嗟に、そう言ってしまい、自分でももっと他に言い方があるだろうと思ってしまった。



私の視線をたどった波留は、苦笑しながら言った。



「めちゃくちゃ重いよ。だってタクシーで帰って来たもん。」



「タクシー??!」



「そうだよ。だってあれ持って電車乗るの恥ずかしいじゃん。」



世の非モテ男子から見れば羨ましさしか無いようなあのダンボールも波留に取っては恥ずかしいらしい。



「だったら、もらわなきゃいいじゃん。」


そう言って、『しまった』と思ったけど遅かった。


波留が、すごく嬉しそうにだけど悪魔のような笑みでこちらを見ていた。




その晩、ベットの上で頑に背を向けて寝る私を後ろから抱きしめた波留はすこし笑っていた。

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