僕が彼女にチョコを貰えなかった理由
私、三田春香は大学の教育学部に通う3年生。



同じ大学の工学部に通う桂木龍人とは付き合って2年になる。



龍人は、彩花と同じ高校出身で、大学1年の時に全学部共通の講義の時に、彩花を介して知り合った。


正直、初めはちょっと怖そうな人だなと思っていた。



170cm台後半の長身で、昔から剣道をやっていたせいかガタイもいい。


黒髪で短髪。目は細めであまり笑ったりしない。


喋ったりもしない。



彩花が挨拶しても、軽く会釈ですます龍人の印象はあまり良くなかった。



顔見知り程度の関係が続いたある日。


私は、大学の敷地内で、子猫を見つけた。


多くの人が集まる大学ではそんなに珍しい事ではない。


えさをくれる人がいるから猫が集まって来るのか、人が捨てに来るのかはわからないけど。



駐輪場の端っこの方で小さくなっているその子猫は、私が実家で飼っている猫によく似ていた。


思わず近寄って抱き上げる。


逃げないから怪我でもしてるのかと、心配したけど、大丈夫そうだった。


ふわふわの柔らかくて暖かい感触に思わず笑みがこぼれる。


多分、野良猫なこの仔をどうするべきか考える。


私の一人暮らしのアパートはペット禁止だし。


実家暮らしの彩花に聞いてみようか?


いや、いっそ、電車で片道2時間かかる実家に連れて行ってまおうか?



そんなことを考えていると



「春香ちゃん?」


あまり聞き覚えの無い声に振り向くと、そこには龍人が立っていた。


名前を呼ばれたことと、知り合って何ヶ月か経つのに初めて聞いた彼の声に驚いていると、龍人は慌てて


「あ、ごめん。名字覚えてなくて。

 鈴木さんが、名前で呼んでるの聞いて・・・」


「あ、そっか。」


それを聞いて、納得がいった。
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