僕が彼女にチョコを貰えなかった理由
「何してるの?」


「え?あぁ、これ。」


私は腕の中の子猫を見せた。


「飼うの?」


「うーん、私、アパートだから実家に連れて帰ろうかなって」


「え?今から??!」


「うん。今から、授業もうないし。」


「実家、近いの?」


「片道2時間くらいかな。」


私が、そう答えると龍人は驚いたみたいで、目を丸くした。


「その子、俺がもらっちゃ駄目?」


「え?桂木君、猫好きなの??」


「うん。可愛い。」


真顔で可愛いと言う龍人にちょっと笑いそうになった。


「いい?」



「うん。でも、勝手に連れて帰って怒られない?」


「大丈夫。親も慣れてるから。」



そう言って、私から子猫を引き取った。


自分の顔の高さまで持ち上げて、


「お前、可愛いな。」


そう言って優しく微笑んだ。


私は、その笑顔に不覚にもときめいていてしまった。



それから私は、龍人によく話しかける様になった。


無愛想で無口な怖い人だと思っていた龍人だったけど、そうじゃなかった。


しゃべるのが苦手で、実は、怖めの顔の事も気にしてるみたいだった。


拾った子猫はモモという可愛い名前をつけてもらって、龍人の携帯にある大量のモモの写メから大切にしてもらっているのがよくわかった。



私が、いきなり龍人と仲良くなったもんだから彩花達に問いつめられて、子猫のことを話すと、千佳に言われた


「それ、もう付き合うフラグ経ってんじゃん!」


「ふ、ふらぐ??」


「無口な彼の、優しい一面を見て胸キュンでしょ?」


他の、二人もうんうんと頷いている。


「そんなんじゃないよ・・・」


とは言ったけど、私と龍人の距離はどんどん縮まり、結局付き合う事になった。


その事を報告すると、


「ほら、やっぱりフラグ立ってたじゃん!」


と千佳に言われてしまった。


いや、だからフラグって何?旗?


どうやら、漫画やドラマだったら、絶対に恋に落ちるシチュエーションだってことを言いたかったらしい。
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