僕が彼女にチョコを貰えなかった理由
結局、私はチョコレートケーキをあげなかった。


バレンタインに渡すつもりだったので、デートの約束はしてたから、バレンタインにデートして何も無いのも変な気がして、実家から自転車で通う龍人に手袋をあげた。


龍人は、喜んでくれて今でも使ってくれている。



次の年、今度は生チョコを作った。


でも、結局それも渡せなかった。


代わりにマフラーをあげた。



今年も、もう手袋を用意してある。


2年前にあげたやつは、指のところが薄くなって、もう暖かそうじゃ無いから。



チョコをあげていないことは、彩花しか知らない。


あげない理由を知っているのも彩花だけ。



「確かに、桂木君とこのケーキはおいしいけどさぁ、それと春香に貰うのとはわけが違うんじゃない??」


余ったケーキを食べながら彩花が言った。


「それにさぁ、春香が作ったケーキだって美味しいわよ?

 桂木君にとったら、春香が作ったってだけでいいんだし、自信持ったら?」


「でも、不味そうな顔されたら立ち直れない・・・・」


「そんな顔しないでしょ。」


「・・・・・・」



確かに、龍人は優しいから、絶対にまずいとは言わない。


でも、嘘の苦手な龍人は顔に出る。


元々、表情豊かな方じゃないから、親しくないと分からないが、隠すのが苦手な分、仲良くなればすぐに分かってしまう。


特に、食べ物に関しては、物凄く分かりやすい。


一度に口に入れる量とか、食べるスピードとかが全然違う。


「まぁ、私からすれば、その悩みだって単なるのろけだけどね。」


素直になれず幼なじみに何年も片思いしてる彩花はめんどくさそうに言った。


私から見れば、片思いだと思ってるのは、本人達だけで実はしっかり両思いだ。


彩花の悩みこそ単なるのろけだと思うけど、口に出すと何が返ってくるか分からないので、黙っておくことにした。



明日は龍人と映画に行く約束をしている。


私は、本当は龍人にこれを受け取って欲しいんだろうか、欲しくないんだろうか。



それすらも分からなくなってしまった。
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