僕が彼女にチョコを貰えなかった理由
2月14日 (土曜日)



龍人と待ち合わせの場所に行くと、すでに龍人は来ていた。


「待った?」


「ううん。今来た事。」


これは多分嘘。龍人が私より後に来た事は無い。


待ち合わせの10分前に来ても龍人が先にいた。


もっと早く来るつもりだったのに、ギリギリまでどうするか悩んでいたら、遅くなってしまった。


結局、私のバックの中には、手袋とブラウニーの両方が入っている。


「じゃ、行こ。」


せっかくのデートなんだし、デートの間は、悩むのをやめて楽しもう!!



差し出された大きな手を握って、映画館にむかった。



映画を見て、ぶらぶら買い物をして、ご飯も食べた。


スゴくスゴく楽しかったけど、アパートに近づくにつれ憂鬱になる。


アパートの前についた。


龍人は明日、朝からバイトだからうちには寄らない。



だから、渡すなら今しかない。


私は、鞄から



手袋の入った包みを取り出して、龍人に差し出した。


「これ」


「ん?くれるの?」


「うん。」


包みをあけて中身を確認する龍人。


「手袋?」


「うん。だって、今使ってるやつ、もう指の先が薄くなっちゃってるでしょ?

 だから、新しいやつ。」


そう言うと、龍人はちょっとだけ驚いた顔をして、それから嬉しそうに笑って


「ありがとう。」


と言った。


ねぇ龍人。


もし、あげたのが手袋じゃなくてブラウニーだっても、そんな顔してくれたかな?


そんな事を思いながら龍人を見送った。


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