嘘つきな僕ら


学校に着く、ほんの手前で守から連絡が入った。

“ごめん、英語の予習やってなくて、今日多分当たるからさ”と適当に嘘をつく。

守は電話越しに笑っていた。

でも、俺は笑えなかった。


だって、それは嘘、だから…。



学校について、いつ守が来てもいいように、俺は英語のノートを広げ、あたかもやり忘れの予習をやってますという雰囲気を出す。


もう、彼女は来ていた。

友達と笑い合う彼女。



ほら、彼女だって笑ってんじゃん。


だから、これで良かったんだ。



でも。

笑ってる彼女の目は赤く腫れていた。


…のような気がしたけど。


それはただ俺とのメールで寝れてないから、そう自分に言い聞かした。



でも、心では、俺のことで、俺とのメールのことで泣いてればいいなとも思っていた。


俺はそのことに気付かない振りをして、英和の辞書を広げて、適当に単語を探し始めた。




しばらくして守が教室に入ってきた。


『良之!』


俺とは逆に何かを期待するようにルンルンの守。



『あぁ…はよ』


俺が挨拶をすると、守は当たり前のように俺の前の席に腰を落とした。



『そんで昨日はどうだったんだよ?』



どうって……



『あぁ~守との連絡の後に返信きたよ』


何事もなかったように俺はしらーっと答えた。



『なんて?』


『いや、初めての連絡だったからさ、特に話出来なかったよ。
 てかさ?守の方が話し上手だし盛り上がって良かったんじゃね?』


『いやいや俺は好きな女の前になると緊張してダメなんだよ』


守はそう言って苦笑いを見せる。


『そうかな…まぁ、でも俺がメールするよりも自分でメールしたほうがその人らしさみたいなものを伝えられるんじゃね?』


我ながら嘘が上手だと思った。

あんなに守になんて言えばいいんだろうって悩んでたのに、それが嘘みたいに俺は守にそう伝える。


『かもな。でも人からの評価っていうのも大事だろ?
 てな訳でしばらくよろしく頼むわ!』


守はそれだけ言ってトイレトイレと教室を出て行く。



完全に負けてる。


でも、俺…もうメールできない。


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