嘘つきな僕ら
『え~今日は以前から話があったように席替えを行います』
担任がホームルームの時間にクラス全員に届く声でそう話した。
『そういえば今日だったよな』
守が振り返り、俺に小声でそう言う。
今の席、意外と気に入ってるんだけど…
廊下側の一番後ろ、そんで前は守。
これからの季節窓側で直射日光を浴びるより廊下側の方がまだいいだろう。
『今回はみんなの希望を聞いてご対面でやろうと思う。
まずは女子から席を決めてもらうから野郎は廊下出ろー』
守が立ち上がり、それに合わせてクラスの男が教室を出て行く。
ふと窓側の一番前の席に座る彼女と目が合った。
その一瞬、時が止まったかのように、俺と彼女は視線を外さなかった。
初めて彼女をまともに見た。
『良之?』
背後から守に呼ばれ、俺は守の後に続いて教室を後にした。
教室の中では女子たちが“私ここにする”とか“被ったからじゃんけん”とか様々な声が聞こえてくる。
彼女はどこに座るんだろうか。
『隣になれたらマジ死んでもいいわ』
守がそんなことを言い、俺は小さく笑った。
『守、本当に西山さんのことが好きなんだな…』
俺の言葉に守が振り返る。
『冗談だと思った?』
『…そういうわけじゃないけど。
でもなんで西山さんなんだよ?』
確かに成績優秀、先生たちからの信頼も厚い、そんで可愛い、とくれば大抵の男は彼女を好きになるだろう。
守に聞かれなくてもそんなの誰がどう考えたって分かることだ。
でも、聞きたいと思った。
『三年になって、初めてこの教室に入ったとき、俺、アイツとぶつかったんだよ。
“痛い”とかでなく“ごめんなさい、大丈夫でした?”って言われて。
その時、すごく心配する目で俺のことと見ててさ、なんかうまく言えないけどいいなって思ったんだよね…それからよくアイツを見るようになって、気づいたらそれは好きだってことなんだな~って……てか、こんな話しててマジ恥ずかしいわ、俺…』
守の顔が一気に火照ったように赤くなった。
『…そっか…』
始まるのは簡単なんだな…
『まぁ…なんか色々言っちゃったけどさ、
とりあえず俺、アイツのことが好きなんだよね』
『頑張れ、俺、応援するから』
俺の言葉の後に、担任が女子と男子が入れ替わるように指示した。