嘘つきな僕ら


守に聞けて良かった。

守が彼女を好きになった理由…


だから、守に“応援する”と言えた。


俺は守の後に続いて教室に入っていく。


…の、瞬間だった。




ドン!


教室に入ろうとする俺に誰かがぶつかった。


ぶつかった奴を確認して、その視線の先に映る人に驚く。



『ご…ごめんなさい』

俺と視線が合ったその人は体を小さくしながら、そう謝罪した。


『あ…俺は平気。…大丈夫?』


『…大丈夫です…ごめんなさい…』


西山さんはそう言って俺の横を通り過ぎる。




……!?



通り過ぎる時、俺の手に触れる何か…


俺は振り返った。


でも彼女は振り返らなかった。




『良之?』


守に呼ばれ、俺は彼女から受け取ったものを握りしめて教室に入り、ドアを閉めた。



『俺ここー』

『俺もここー』


そんな言葉が飛び交う中、俺はポケットの中で渡された紙を開く。

他の奴に気付かれないように…



“廊下側の一番後ろの席”

紙にはそう書かれていた。



俺は教室のドアの方を見つめる。



どうして彼女はこの紙を俺に渡した…?



『良之?』


『良之!』


守が俺の顔を覗き込むようにして見ている。


『あ、あぁ…何?』


『何、じゃねぇよ。
 席どこにする?』


『あ…席ね…』


紙には廊下側の一番後ろの席と書かれている。


でも、それで本当に隣り合わせになったら守になんて言われるか…


『もう廊下飽きたし、窓側いかねぇ?』


そうだよ守の気持ちも知ってる、好きになった理由も聞いて応援するとか言った、だからこんな紙に惑わされずに、この紙に書かれた廊下とは反対の窓側にすればいい…



『良之?』


そうだ。

それが正しい。

俺は守を応援するって決めた。


だから…



『窓行くぞ?』


守は前を行く。


俺は後に続けばいい。


そんで守の援護射撃をすればいい。




なのに。



『守』


俺の呼びかけに守が振り返った。




『俺、今の席がいい』


俺はなんてバカな奴なんだろう…




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