嘘つきな僕ら
『…いいけどさ…俺とメールしちゃっていいの?』
『良之も好きなのか?』
『好きとか嫌いとかじゃなくて、ただ単に好きな女が別の男とメールしててもいいのかって話だよ』
俺の言葉に親友は顔を上げる。
じっと俺の目を見つめる親友。
痛いくらいの視線から逃れようと、視線を変えようとした瞬間、親友は口を開いた。
『良之はいやだよ。
でも…俺の知らない奴と連絡されるよりはマシ』
良之はいやだよって返すかよ。
そんな俺に頼んでおきながら。
『ふ~ん』
親友は制服の内ポケットから携帯を取り出し、西山さんの連絡先を見つけ、俺に差し出す。
『本当にいいわけ?』
俺がそう問いかけると親友は首を縦に一度だけ振った。
それを確認してから、俺は親友の好きな女のアドレスを携帯に登録した。
『じゃ…連絡してみるよ』
俺のその言葉に、親友は神妙な表情をしていたけれど、俺は視線を変えて、親友の好きな女を探す。
本当にこれでいいんだろうか…。
見つけたその先には何も知らず友達と笑い合っている西山さんがいる。
『なぁ、良之…
お前さ、俺の協力者、だよな?』
『なんで?』
『アイツのこと、好きになんなよ?』
『ならねぇーよ、お前が好きなの知ってて好きになるわけないじゃん』
そんな心配いらないっていうのに。
俺は笑った。
親友も笑った。
『お前と女の取り合いなんかしたくねぇーから。
良之、絶対、アイツを好きになんなよな』
『分かった分かった』
『絶対だからな』
『分かってるよ』
その一言が全ての始まりでした。
あの時、俺の言葉に親友も安心しきったように笑って、そして俺も親友から信頼を得たと笑った。
その、本当に数時間後。
僕は嘘をつき始める、親友にも、親友の好きな女にも、そして僕自身にも。
この関係性を守るための、自分を守るための嘘を…。