嘘つきな僕ら


そして、その次の日も守は眠たそうな顔で教室に入ってきた。


『また電話?』


俺が聞くと、さっきまでの顔とは一変、にこやかな顔をして俺に頷く。


恐るべし、恋のパワー…



『一昨日は俺の一方的な感じだったんだけど、昨日は由莉からもいくつか話題くれてさ、マジ癒されるわ』



『そんなに日に日に距離が縮まってるんなら俺もお役ごめんだな』


俺がそう言うと守は俺の顔を覗き込む。



『なんで?』


『なんでって…何?』


『なんでそんなこと言うんだよ?』


『いや、もともとは守のいいところをアピールする為に連絡始めただけだから、守がそんな風に西山さんと上手くやってるんなら、俺の必要ないじゃん?』


『あ~ぁ~…確かに…』


『だから今日の夜にでも言うわ』


『は?』


『だから、今日でおしまいって』


『別にお前らはお前らでメール続けててもいいんじゃね?
 由莉も言ってたよ、お前とメールするの楽しいって』



だからだよ。


だから終わらせたいんだよ。



でも俺の心の内なんて守が知る由もない。



『あ、そう…けど俺も疲れるし』


俺はそう言って、隣の席を見つめる。


『そっか、お前メールとか苦手だもんな…悪かったな、て…由莉』


守の言葉に後に、俺の視線に映る彼女の姿。




『あ…えっと…ごめんなさい…気づけなくて…』





“違うよ”って

“嘘だよ”って

そんな顔をする彼女に言いたかった。



でも。


守がいる前でそんなこと言えない。


彼女を庇うようなことを言えば、守に俺の気持ちがバレてしまうかもしれない。




『ごめんね、守の言う通り、俺、メールすんの苦手だったんだ、実は』


俺はそう言いながら、できる限り笑った。


だってそうしてないと、俺の言葉に更に傷ついた顔をする彼女に言ってしまいそうになったから…



『ごめんなさい……もうメールは…いいです……ごめんなさい……』


謝罪させたかった訳じゃない。

そんな顔をさせたかった訳じゃない。


でも、ごめん…


俺の気持ちがバレるわけにはいかないんだ…。


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