嘘つきな僕ら
『由莉?』
彼女の異変に気付いた親友の瀬川麻衣子が近寄ってくる。
『…由莉?』
『ちょっと、あんた達、由莉に何したの?!』
話さない彼女の代わりに、状況が掴めない瀬川は俺と守に問いただす。
『いや…俺たちは何も…』
守がそう答えると瀬川は守はきつく睨みつけた。
『だったらなんで由莉、こんな顔してんのよ!』
俺と守は瀬川の睨みに完全にフリーズ状態になってしまった。
『ちょっと、なんか言いなさいよ!!』
こんな凄みのある女は初めて会う…
てか彼女と友達なのが嘘みたいなくらい…
俺と守は蛇に睨まれた蛙のように固まった。
『…ち…違うの……麻衣子ちゃん、あのね…違うの…』
そんな俺たちに代わって、彼女が口を開く。
『あの…事情は廊下で話すから…二人には関係ないの…』
彼女の言葉を聞き、瀬川はもう一度俺たちを睨みつける。
『麻衣子ちゃん、行こ』
そんな瀬川を半ば強引に彼女は廊下へと連れて行く。
しばらくして瀬川の“アイツ~!!”という声が廊下に響き渡り、それを聞いた、教室の中にいる全員が廊下の方に視線を向けた。
『な、なんだ…』
守も驚いた顔をしている。
多分、俺も…
『お、おい…守、一組の祐輔が呼んでんぞ』
そう知らせに来てくれた奴も、廊下の声に驚いている様子だ。
『あ…サンキュ、わりぃ、俺行ってくるわ』
守がそう言って反対のドアから廊下に出ると、俺たちの席に近いドアから入れ替わりに瀬川が入ってきた。
『ちょっと、あんたどういうつもり?』
迷わず俺の席に来ると、俺の机を力強く叩いたあと、瀬川はそう怒鳴りつけてきた。
『……何が…』
あまりの迫力にクラス全員の視線が一斉にこちらに集まる。
『…麻衣子ちゃん!!』
俺と瀬川の間に止めるかのように彼女が入ってきたが、瀬川は構わず、
『由莉どいて、そんであんたは廊下出なさいよ!!』
突然首元を引っ張られ、そのまま無理矢理立たされる。
『……は……ちょ…』
『うっさい!黙れ!!』
強引に廊下まで引きずられるかのように引っ張り出される。