嘘つきな僕ら
俺?
こんなに引きずられないといけないようなこと、俺、なんかしたの?
突然の出来事に頭がこの事態に追いついていかない…
『ちょっと、あんたどういうつもりな訳!!』
廊下の端まで来たかと思うと、突然首元を離され、そしてそう怒鳴られた。
『だから…さっきからなんなんだよ…』
『由莉のことよ!!』
突然彼女の名前が出て、でも何故彼女の名前が出てくるのかが分からない。
『西山さんが何』
『由莉、泣いてた…
あんたがメールすんの面倒くさいとか言うから!!』
そ、それは…
『知らねぇよ!!』
『由莉の気持ち、知ってんでしょ?!
だいたいあんたから由莉にメール送っておきながらなんであんなこと言うわけ!!?』
『だ、だから…』
だから。
彼女にメールを送った、最初の理由は守に頼まれたからで。
『だから、何?
あんたかたメール来て、由莉、すごい喜んでたんだよ!!?
なのに…その後だって由莉に期待持たせるようなことばっか言って!!』
『俺は!!』
『何よ!!?』
『…確かに期待もたせるようなことを言ったのかもしれない。
でも!!気持ちなんて言ってない!!』
俺の言葉に瀬川が一瞬怯む。
『じゃ…じゃぁなんで由莉の隣の席を選んだのよ!?』
それは……
『好きとか言ってなくたって…
あの席を選んだ時点で、あんたの気持ちなんてバレバレじゃない!』
『……なんで席のこと知ってんだよ…』
『あたしが由莉に提案したからよ。
前の日にメールもできなくなちゃったって由莉が泣いてたから…
だからあたしが言ったのよ!
席替えで自分の席を教えてみればって…それであんたの気持ちを調べてみればって…そう、あたしがあの子に言ったのよ……』
……そうだったんだ…。
瀬川の話を聞いて、彼女の想いの深さを知る。
『由莉のこと、好きなんじゃないの…?』
『…好きなわけ……』
好きだよ。
大好きだよ。
もう守を裏切ってもいいくらい…
そう思う自分もいた。
でももう一人の自分が言う。
『好きなんかじゃないよ……』
守を裏切っていいわけがないって。
『じゃ…どうして…そんな顔、するの…?』
『どうして、そんなに苦しい顔をしてるの?』
もう、どうしていいか分からない……
『…見んなよ、てか誰にも何も言うな!』
俺はそれだけ言って、一人教室の方へと歩き出す。