嘘つきな僕ら
退屈な数学の時間が終わり、休み時間に入り、よく状況が分かっていないタケが席を動いた。
向かう先は良之のところ。
俺もそれに便乗したかった、でもタケと良之が話すことで、良之の本当の気持ちが聞けるかもしれない。
だから俺はタケと良之が動くのを見て、何事もなかったように二人の後を追う。
たいていこの二人が話すのは屋上階段のところだ。
『良之、ちゃんと説明してもらうからな』
タケに半ば強引に引かれ、タケと良之はお馴染みの場所へと歩いていく。
俺はそっとその後を追った。
二人はお馴染みの場所へとたどり着くと、向かい合う形になってタケの事情聴取が始まった。
『そんで、あれはどういうこと?』
『あれ?』
『とぼけんな、席替えのことだよ!』
『あ、あぁ~、あれな、本当にサンキューな、マジで助かったよ』
良之はそう言いながら笑う。
『だから、なんで突然なんだよ?
てか俺の記憶によると確か良之、両目とも1.2だったよな?』
『…いやいや、マジで最近視力落ちたんだよ、これが』
『嘘こけ、最初から視力下がってんのが分かってたら後ろの席になんかいかねぇだろ?』
タケの言葉に対しての良之からの返事がない。
『俺、あの席行って思ったんだけどさ、
西山となんかあったの?』
ナイス!タケ!
タケの質問に良之の本音が聞けるはず。
『…なんにも』
『ほんとかよ?』
『てか西山さんは関係ないよ』
『西山さんとなんかあった、よな?』
『タケ、そんなにしつこい奴だったっけ?』
『俺があの席に来たとき、
守が西山に聞いたんだよね』
『なんて?』
『お前が隣が良かったって?』
『なんだ、それ…』
『西山、“うん”って答えてたよ?
西山のその返事に俺、思ったんだけど…
西山となんかあったから席を変えたんじゃないのか?』
『面白いこと想像するね、タケ。
マジで発想力がすごくて感心するわ、でも、違うけどね』
良之はどこまでも自分の気持ちを、本音を言おうとはしない。
『なら…なんで西山、泣くの?』
『…は…?』
悲しそうな顔はしてた、でも泣くまでは…あの時は確かしてなかった…
あのあと?
俺が前を向いた、その後に泣いたってこと?
なんで…?
なんで、なんで泣くまでしても良之なの…?
『お前となんかあったからにしか思えないんだよ』
『俺とは何もない』