嘘つきな僕ら
『じゃ、俺、聞いちゃっていい?
良之となんかあったのかって』
『だから西山さんとは何もないって』
『なら、お前、あの席に戻れ』
『…は…?』
『ちゃんと話せないなら、あの席に戻って辛い思いでもしてればいいだろ』
タケはそういうなり体を回転させて一段階段を降りる。
二段、三段…
俺は身を潜める。
『……何もない、ただ、俺があの席にいるのが辛くなっただけ…』
タケの階段を降りる足が止まる。
『西山さんのこと好きな奴がいて……』
『俺も……意識するようになって……』
『でも俺は西山さんのこと好きな奴の協力をしなきゃいけなくて……』
良之が言葉にする。
スムーズに言えないくらい、きっと自分の中で困ってて…悩んでて…
良之はいつも俺の心配をしてくれる奴で、なんだかかんだ助けてくれて。
今回のことだって、俺の協力をするなんて言ってから、だから自分の中で芽生えた気持ちさえ自分の中に封印してて。
『お前さ…協力してるのって守のことだろ?』
タケがそう切り返す。
『…な…んで……』
『やっと全部線に繋がったわ、これで』
『…繋がった?…線?』
今度はタケの言葉の意味が分からない良之。
『守に最初に西山のことが好きとか言われて、そんで協力してほしいとか言われて、守のことで動いてるうちに、お前も西山のことが好きになった、的な感じだろ?』
いつもはおちゃらけた様子のタケなのに、まるで探偵かのように俺たちのことを当てていく。
良之よりもタケのほうが勘が鋭かったんだな…
『お前の行動、守の言葉、西山の涙、全部一直線上につなげると、そういう答えになる』
『…けど、俺は終わりにするから』
『終わりって?』
『席を替わってもらたのはもう終わらせるため、だから』
…終わらせる…?
俺との関係?
それとも由莉への想い?
俺の心臓の鼓動が速くなる。
『俺は守とこのままの関係でいたいから、一番最初にリセットする。
まだ西山さんとは何も始まってないし、だからこそ終わりにする』
…やっぱり、な。
良之と長く一緒に過ごしてきたからこそ分かる、想像がつく。
お前はいつもそうだよな。
そうやって、いつも俺を考えてくれる。
自分を犠牲にしてまで、俺のことを思って、そう身を引いてくれる…
分かってた。
こうなること。
だから、俺は良之のこの性格を利用したんだよ。