嘘つきな僕ら
俺は本当に嫌な性格だよ。
本当に本当に嫌な人間だよ。
生きてる価値なんかないに等しいくらいに、お前のこと利用して、お前を犠牲にして、お前に身を引かせる…
そうだよ。
最初から、これは計算だった、これは計画だった。
由莉のこと毎日想ってるからこそ、いつも由莉を見てるからこそ、由莉が良之のことを好きだってなんとなく気付いてた。
俺の気持ちを良之に打ち明けたとき、良之は俺と同じように由莉を見るようになる、そうすればいつか由莉が自分を想ってくれてることに気付く。
そして、その時は良之も由莉を好きになって、そんで二人は両想いになって、めでたしめでたし…
でも、俺はそんなのいやだ。
俺の由莉への気持ちはどうなる…?
だから、俺はこの計画を立てた。
由莉が良之を好きなら、由莉から良之を遠ざければいい。
良之は俺を疑わない、俺に協力してくれる、例えそれが自分自身を苦しめたとしても。
由莉がどんなに良之を想っていても、俺の協力者にしてしまえば良之は俺を裏切らない。
最低。最悪。
どんなに罵られてもかまわない。
どんなに人の気持ちを利用する陰険な奴だと言われても。
明日、全世界の人間が俺を非難し、そして俺から離れていこうとも、それでも由莉から良之を永遠に奪いたかった。
そうすれば、由莉は永遠に片想いのまま。
その時、俺が由莉に一番近い存在となり、由莉を俺に振り向かせる。
由莉を俺のもんにする。
だけど。
『お前の言いたいことは分かる。
友達か好きな奴か…選べねぇよな?
どっちを選んでも後悔するだろうし…
それなら友達を選ぶ、その決断は正しいのかもしれない。
けど、お前は西山の気持ちを考えたこと、あるか?』
『…西山さんの気持ち…?』
『西山さんはただ、お前のことを想ってる。
お前がいつか振り向いてくれるのだけを待ってる。
そんな奇跡のようなことが起こることだけを願ってる。
俺には、あの時の西山の涙をそういう風にしか理解できないんだよ?』
『…けど、俺は約束、したから…』
『じゃ…お前に聞く。
お前は本当にそれでいいのか?
お前が尽力して守の恋が実って、そんでその時、心から喜べんの?』
『西山に“おめでとう”とか“幸せに”って言えんのかよ?』
タケの言葉が俺の胸に突き刺さる。
『…喜べるよ…言えるよ……
そうなるために、今、リセットすんだから…』
叶ったんだよ。
俺の計算は上出来、俺の計画は良之のこの言葉で成功した。
これで由莉は二度と良之とは両想いなんかになれない。
良之の彼女になれなければ、良之に告白しても意味がなくなる…
そうだよ、叶ったんだ。
なのに。
どうして、俺の心はこんなにも痛むんだろう…
どうしてこんなに悲しいんだ?
どうしてこんなに淋しいんだ?
俺は、なんでこんなにも苦しい顔をしてるんだろう…