嘘つきな僕ら
第一章
始まる
その日の夜。
俺は西山さんの連絡先を眺め、始まりの文章を考えていた。
守と約束したわけだし、西山さんに連絡をして、それで守のいいとこを伝えて…
でも女子とまともにメールをしたことのない俺にとって無理難題。
『菅原 守の友達の中原良之です…』
うん?
確かに守のいいところを伝えるためのメールになるわけだし、間違ってはないけど、守と西山さんってそんなに仲がいい訳でもないのに、守の友達です的な始まりってどうなんだ?
そんで?
そこからの文章のつなげ方は?
唐突に守のいいところを言われても変だよな…?
でも、だからといってそれ以外に西山さんと話す内容もなく、てか普通にどうして自分の連絡先を知ってるんだって話で…
『あ~ぁ~!!めんどくせぇー!!!!!』
俺はベッドになだれ込み、携帯をひょいっと投げた。
~♪~♪~♪~
メールが届いたことを知らせる着信音が軽快に鳴り響く。
『……守?』
俺は投げ捨てられた携帯を取り上げ、受信ボックスを開く。
『……みんなでつなげよう仲間の絆……?』
胡散臭い表題に首を傾げる。
『受験シーズンが本格化する前に、我ら三年三組の絆を深めよう!
中学を卒業したら、三年三組はバラバラになります。
みんな新しい自分の居場所を求めて旅立つ、その日が来る前にクラス全員の絆を深めていこうと思います。
まずは学級委員の俺からスタートします。
俺が友達にこのメールを回すので、もらった奴は自分の友達に回してください。
全員に回りきったとき、このメールにはみんなのアドレスが入ることになります。
卒業しても、この仲間がいる、絶対に俺らの絆は薄まったりしない。
卒業後の励ましとなれるよう、皆さんも協力してください。』
『たけ』
『裕二』
青春ごっこを感じさせる文章の後には、これに賛同した奴らのアドレスが入ってる。
男子の学級委員からスタートしてるから、見事に男子の連絡先ばっかだ。
知ってる奴のアドレスも入ってる。
最後は守、守から俺にこのメールが届いたってことか…
俺は一度そのメールを閉じて、急いで守から教えてもらった西山さんのアドレスを紙に書き込む。
そして再びメールを開く。
一つ一つのアドレスを確認していく。
クラスの半分以上が参加してるみたいで、アドレスの量も多い。
二度、三度見直した。
でも西山さんのアドレスは入ってなかった。
幸い、男子の後の方に回ってきているし、女子に回しても変に思われない…。
俺は送信先に彼女のアドレスを入力した。
そして一通送信した。
戻ってこないことを確認して、もう一通同じ内容のメールを送信した。
一つだけ変えたのは、俺のアドレスの最後に“←返信ください”とだけ入れたこと。