嘘つきな僕ら
『なんで…お前がこんなこと…』
守。
俺はやっぱり小さい頃からずっと一緒だったお前との時間が大切だと思うんだ。
確かに西山さんのこともお前に匹敵するくらい大事な存在になりつつあったけど。
でも、俺はこの答えが今までの俺らの関係も、これからの俺らの関係も大事にしていける、そんな気がしてならないんだ。
『…お前、本当にバカだよ』
『お前がどんなに俺のことを思ってくれれても、それでも俺は今のお前の言葉も行動も全部ラッキーとしか思わないからな!!』
守はそう言ってこの場を走り去っていく。
『良之…なんで受けないんだよ…?』
『タケ、これでいいんだよ』
俺はそう言って、階段を降りる。
『俺、今までずっと一緒にいた守の約束さえ守ってやれなかった。
守の応援するって言いながら、結局守を裏切ることになって…。
そんな俺が西山さんが好きって言ってくれても、俺は何もできないと思うんだ。
何もできなくて、ただ悲しませたり、傷つけたりしてさ…
西山さんにはいつも笑っててほしい』
『…お前が笑わせてやるって選択肢はないのかよ…?』
『だって、現に今だって泣かせてんでしょ?
だったら余計に俺にはそんな選択肢、ありえねぇよ』
『でも…西山はお前のことが』
『だったら断るよ、西山さんのためにも』
振り向けない。
言葉ではこんなこと言ってても、きっと今の俺の顔は人に見せれたものじゃないから…。
『西山のため…?』
『今は俺だけ、そう思ってるだけで、そんなの錯覚だよ。
俺みたいな奴よりも、自分のことだけを一途に想ってくれる奴のもとの方が幸せになれるんだからさ、守みたいな』
タケはもう何も言わなかった。
と、いうよりも何も言えなかった。
何を言っても、俺の言葉に、行動に、決心が揺らぐものが見えなかったから。
『教室戻ろう、もう授業始まるよ、タケ』
俺は振り向くこともせずに、ただ前へ足を動かした。