嘘つきな僕ら
30分経過して、俺と加藤は意味不明な数字やら記号やらに頭をパンクさせていた。
『もう無理~』
加藤はそういうなり席を立ち上がり、自販機の方まで歩いていく。
俺もその後を追いかけようとした瞬間、
『あ…あの、分からないこととか…』
彼女がそう尋ねてきた。
すっごい顔を真っ赤にさせて、今にも泣き出しそうな、そんな顔で。
『………』
俺が答えないでいるとタケが脇腹を突く。
『あ…うん、なんとか』
俺がそう答えると彼女は本当に泣き出しそうで。
『ジュース買ってくる!』
俺はその場から逃げた。
何故、あんな顔をする?
どうしてあんな顔で俺を見る?
俺はジュースを選んでいる加藤の背後に回り、加藤の選んだものとは違う飲み物のボタンを押した。
『えぇ~~!!』
加藤の叫びが館内に響き渡る。
他の利用者の人たちからも一斉に視線を向けられ、俺はすごい恥ずかしい気持ちになった。
『良之、何すんだよ!!
コーヒー牛乳とコーラで迷ってたのに、水とかないだろ…』
コーヒー牛乳とコーラって……
『わりぃ…』
俺は謝り、コーヒー牛乳とコーラを両方買った。
『どっち?』
俺が差し出すと加藤はコーラを手にした。
『水は?コーヒー牛乳は?』
『水は俺、飲むわ、コーヒー牛乳はタケか守かに』
俺の言葉が途中だというのに加藤は俺からコーヒー牛乳を奪い取ると、一足先にと言わんばかりにみんなの元へと走り出す。
途中職員の人に“走らないでください”と注意を受けたが、みんなの元へと戻ると加藤は俺から奪い取ったコーヒー牛乳を彼女に渡した。
『…え…?』
突然の出来事に驚く彼女に、
『勉強を教えてもらってるお礼だって、良之が』
加藤はそう言って、手渡すと自分の席に戻ってった。
おいおい…なんでそういう勝手なことをすんだよ…
内心そう思いながら彼女の顔を見ると、彼女はコーヒー牛乳を見つめていた。
『…嫌い?』
俺がそう問いかけると、彼女は首を横に振った。
そして、
『コーヒー牛乳、大好きです』
そう言って、微笑んだ。