嘘つきな僕ら
『良之、続き』
加藤に言われ、俺は口を開く。
俺はこんなにもおしゃべりな奴だったかな…そう思うくらいに話してる。
でも、二人は嫌な顔をしないで、ただ黙って聞いててくれる。
それが心地よくて、俺は話す。
『でも…席を変わっても逆に守との距離がもっと縮まっちゃったのか…とか色々不安になって…けど守にも聞けない、西山さんにも確認出来ない……何度も西山さんがくれたメールを見返したり、送りそうになる自分の指を止めるのに毎日必死で……守から突然宣戦布告されてもピンとこなかった……』
『俺がメールをしなかったのも守との約束を果たしたいからで…これ以上西山さんを好きになりたくなかった…なのに宣戦布告されても俺にはどうしていいか分からなくて……』
『このままどっちつかずのままじゃダメだって思った…何度も守との約束を果たすためって言い聞かせてきたんだから、もうそれでブレずに行こうと思った……だからアドレスを消した、アドレスを変えた、守を勧めた……断った……』
『でもさ…もう絶対に戻れない、そう実感したとき、初めて思ったんだ…。
また彼女とメールしたい、彼女の声が聞きたい……俺に笑いかけてほしいって……
こんな嘘をつくんじゃなかったって……初めて後悔した……』
『良之……辛かったな…?』
加藤が俺の肩に手を添えて、そう言ってくれた。
『もっと早くに言ってくれれば良かったのにな…』
タケもそう言ってくれた。
『本当は誰にも打ち明けずに、俺の心の中で閉じ込めておこうと思ってた…。
でも……さっき加藤から彼女の狙ってる高校を聞いて……本当に今、恵まれた環境にいる今、何もしないで…ただ無駄に時間を過ごして……それで本当にいいのかって……でも俺が決めたこと……今更西山さんに話しかける資格さえ俺にはない気がして……もう訳が分からなくなって……このことを誰かに聞いてもらいたくて……ほんとごめん…』
『良之さ……
人って、一度失わなきゃ分かんないものだってあるよ。
大事なものなら大事なほど、大切な人なら大切な人ほど分かんないもんだよ。
だからそういう失敗だってする、でも俺はそこからが勝負だと思ってたんだよ?』
タケの言葉に俺は首を傾げる。
『失って初めて気付いてものがどれだけ自分にとって大事なもので、大切なのか分かったら、それに気付いた人間は次はそんな失敗はしない、俺はそう思うよ?』
タケの言葉に加藤も首を縦に力強く振った。
『…タケ…加藤……』
『良之、お前の気持ち、西山に言ってみれば?』
タケの言葉に俺は困惑の表情に変わる。
『今更とかもう無理とか…それは相手がいる上での問題ならお前が判断するものじゃねぇ、相手が判断するものだ』
タケの力強い言葉に俺の心の中で何かが変わる気がした。