嘘つきな僕ら
好きなら
『てかさ、今日から良之は西山と帰るんだろ?』
『…へ…?』
加藤の言葉に俺は素っ頓狂な声を出す。
『…なんで…?』
『え、だって、さっき言ってたじゃん!
行き帰りは一緒出来るからって…』
…そ、それは、確かに言ったけど。
なんというか…あの場を鎮めるためには…的な感じでつい口から出てしまった言葉というか…
『応用に迎えに行く?』
『…へ…?』
『だって、多分瀬川のところっしょ?』
俺が返事を返す前に、加藤は強引に彼女の鞄を俺に押し付ける。
『ほれ、慣れない勉強してタケもパンク状態だし、早いとこ瀬川のとこに連れて行かにゃ』
確かにタケは気絶しそうなほどフラフラしてる。
『守、俺たちしばらくは男二人で仲良くやろーぜ?』
『加藤とはヤだね』
『なんでだよー!』
『加藤と一緒にいると俺、これから出逢う人に勘違いされそううだもん』
『なんだそれ!』
しばらく守と加藤のコントを聞き、俺も慣れない勉強への疲れと、これから彼女のことを迎えに行く緊張感が少し緩んだ気がする。
やっぱ、この4人でいること、すげー楽しい。
絶対に春を迎えても、この4人でバカやりたい、つるんでいたい。
そのためにも、今日は家に帰ったら勉強しよう!
俺が強く決意を固めたところで、全員が鞄を持ち、教室の扉を後にする。
ドンッ!!
先頭を歩いていたタケがきちんと前を向いていなかったのか、誰かとぶつかった。
『いってぇ~…』
『あ、ごめん、怪我はない?』
その声から男だと推測。
『あ…俺こそすんません』
タケがそう言って顔を上げると、そこにはタケより頭一個分ほど大きい男が立っていた。
『…あれ…もしかして5組の有村…?』
タケの言う通り、タケがぶつかった相手は5組の有村 恭平だった。
『有村も塾とか行くんだな…』
5組の有村は学年一の秀才。
まぁ、西山さんと森川っていう男と、1、2、3位を競い合ってる。
『悪い?』
『全然』
有村の言葉には反論や冗談で返す、それが出来ない雰囲気を体全体から漂わせている。