嘘つきな僕ら


『もしもし』


俺は心沈めてから通話ボタンを押した。

至って冷静に第一声が出たと我ながら賞賛。



『良之?
 お前アイツとメール始めた?』


何も知らない。

どんな内容のメールが俺に届いたか、守は知らない。


冷静に、いつも通りの自分で答えればいい。



『あ…あぁ、まぁ』


頭では分かっていても、口から出た言葉はなんとも歯切れの悪いものだった。



『なんだよ、まだメールしてねぇの?』


『いや、メール入れたよ』


『マジで、良之が?』


『なんだよ、その驚きは…』


『いや、だって良之がマジで連絡するとか思ってなかったからさ…』



じゃ、なんで俺なんかに頼んだんだよ!!

俺は心の中でツッコミを入れた。


『わりぃわりぃ。
 まぁ良之のことだからメールの文章を作るのしんどいかなって思って、タイミングよく来た絆メールとかってやつをお前に回したんだけどさ』


…バレてる。

俺が携帯片手に文章を考えていたこと、そんで思いつかなくて四苦八苦していたこと。



『あぁ…うん、助かったよ』


『そんで、もうメールしてんの?』



…メールはなんとか返信がくる、けど…

内容が内容だけに言えない…というか誤解を生んだら困る…っていうか…



『あぁ~それがまだ来ないんだよね』

咄嗟に嘘をついた。

もちろん守に嘘をつく、というか他人に嘘をつく行為が初めてというわけではない、でも今まで一番緊張した瞬間だった。


『マジで?お前相手ならすぐ来ると思ってたんだけどな…』


最後の方はなんとか聞き取れるかなっていう声の大きさだったけど、これまた守の言葉にクエスチョンマークが飛び交う。



『え?』


俺はわざと聞こえない振りをした。



『なんでもない、こっちの事情だから、気にすんな』


…と言われれば更に気にする。

でも、なんだか聞けない。


『まぁいいや、とりあえず俺のこと褒めろ作戦頑張ってくれよ?
 じゃーなー』


守はそれだけ言うと電話を切った。


思わず溜息が出る。


なんかすげー疲れた。

時間にしてたかが3分位の内容だったのに…



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