嘘つきな僕ら


『…あの…』


扉の向こうの彼女に声をかけるも、返事はない。


彼女がこの扉の向こうで俺の話を聞いてくれているのか、それは分からない。


でも、こういう機会は滅多にないと思うから。


せめて、君と同じ学校に行くことを新しい目標にした、それだけは言いたい。



『この間は、その前も…色々とごめんなさい』


俺は静かな部屋に語りかける。


『俺、色々なことに自信持てなくて、いつもあんな言い方になって…きっと西山さんを傷つけたと思います』



『けど、一つだけ…俺の話を聞いてもらいたいんですけど…いいですか?』


彼女の返事はないけれど、俺は言葉を続ける。



『俺、今、新しい目標ができました。
 今まで挑戦とかしたことのない俺だったけど。
 今回は絶対に叶えたい、そう思う目標ができて…すごく難しいと思うし、それを叶えるのは大変だと思うけど、どうしても叶えたいから…』



どうしても、

どうしても、

君のいる学校に、俺は行く。


そんで一番君の近くで君の夢を応援する。



どうしても。




『だから、今の目標を達成することができたら…』



もし、俺がその目標を達成することができたのなら。



『西山さんに聞いてほしいことがあるんだ』



君が好きっていう俺の気持ち。

本当はいつも、君の“好き”が嬉しくて、本当に幸せだってこと。

そして、その気持ちに応えたい、俺も君を同じように想ってること、それを伝えたい。




『……いいかな…?』


俺の問いかけに、目の前の扉が静かに開いた。



『……私に聞いて欲しいことって…いいことですか…?
 それとも』
『今は言えない』


俺は彼女の言葉に自分の言葉を被せた。



『俺、ちゃんと言えるように、聞いてもらえるように、今を努力するから。
 絶対に聞いてもらえるようにするから…だからその時が来るまでは待って欲しいんだ』



俺の言葉に、彼女は首を縦に振って、頷いてくれた。


そして、

『…待ってます』


彼女はそう言って、涙を流した。


俺は、その涙を見て、覚悟する。



もう、


絶対に彼女を不安にさせないように。

彼女を傷つけないように。

そんな男にならないように。



今度こそ、彼女の笑った顔を俺が見たいから。

俺が笑わせてあげたい…



だから、俺、絶対に桜坂に合格してみせる。



『いつも…ごめん…』


俺が謝ると、彼女は首を横に振った。



『でも、絶対に、叶えてみせるから』





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